2012/02/21

便利さの表と裏

先日ノルウェーの選択肢の無さについて触れましたが、それと関連して思うのは、ノルウェーがすごく不便である、ということです。特に日本やアメリカなど、いつでもどこでも、という生活に慣れていると、ノルウェーは想像を絶する不便さです。

毎週土曜日、私は必ずスーパーに買いだめに行きます。なぜなら、日曜日はお店が開いていないからです。なので、少なくとも土曜日、日曜日、そして月曜日の朝ごはんとお弁当用の食べ物を買ってこないといけません。それでも、スーパーは夜9時とかまで開いているので、少し遅くなってもまだ大丈夫です。しかし、薬局は3時には閉まってしまいます。なので、例えばコンタクトレンズの洗浄液が切れたりすると、本当に困ります。24時間営業のドラッグストアなんてものはありませんし、コンタクトレンズの洗浄液とか子供の風邪薬とか、スーパーには売っていないので、土曜日の4時ごろに「あっ!」と思っても遅いのです。お店がはやく閉まってしまうのは平日も一緒で、普通のお店はだいたい5時に閉まってしまいます。



また、ビールを除いたアルコール類は政府の専売で、その名もVinmonopoli (訳してワインモノポリー!)というお店に行かないと買えません。このお店も普通のお店のように、5時には閉まってしまうし、日曜日は開いていないので、週末に飲むワインや、料理用のお酒など、ちゃんと前もって買っておかないといけません。また、大きな祝日、例えばクリスマスや復活祭は、お店が3日も4日も閉まってしまいます。そういう祝日は特別なご馳走を作ったり、人を招いたりするので、普段よりも色々必要になって、ますます大変、かなり綿密な計画が必要となります。あまりそういう能力に秀でていない私にはハナからムリ、と割り切って、大きな祝日は夫の実家に泊まりこみです。(大学教授という人たちは、私達も含めて、こむずかしい数式とかはできても、実質的な生活能力に欠ける人多数です。)

ノルウェーという社会は、「あっ!あれが食べたい」とか「あっ!あれが必要」みたいな突発的なニーズに対応できません。これは、便利さに慣れている者にはかなりのストレスです。しかも、引越してきたばかりの頃は、そんな風に計画的に買い物をする習慣が無かったので、買い忘れも沢山ありました。コンタクトの洗浄液がなくて水につける羽目になったり、歯磨き粉のチューブの上を切って、中に残っている歯磨き粉をこそげ取ったり、洗濯ができなかったりと、経験した不便さは数えたらきりがありません。

しかし、ノルウェーの人たちはこの不便さを、仕方が無い、と割り切っています。なぜなら、その不便さを我慢することで、お店で働く人たちもみんなが休んで家族と過ごせるからです。休日にも開いているお店で働く人たちは当然他の人が休んでいるときに休むことができません。お正月の元旦から初売りが始まるのは便利ですが、裏返せばその日から働きに出なければならない人が沢山いるということです。

また、お店が開いていない、という状態は、構造的に家族の時間を増やします。例えば日曜日、ショッピングなど行けないので、どうしても家族や友人と過ごすことになります。夕方早く帰ってきても同じです。ノルウェーで家族で過ごす時間が多いのは、単に他にあまりすることがないから、というのも大きな理由です。

便利さというのは、まるでドラッグのように、慣れてしまうとそこから抜けるのは難しく、手に入らないと禁断症状のように落ち着きません。けれども、それを乗り切って慣れてしまえば、それはそれでなんとかなるものです。日本の便利さを羨ましく思う反面、別にそこまで便利じゃなくてもいいのでは、とも思うのは、私もノルウェーの暮らしに慣れてきた証拠でしょうか。

2 件のコメント:

  1. Yukoさん、ブラボー!!!
    全く同意見です。

    年中無休や24時間営業の店がそんなに必要なのか!

    夜中に働くと時給が高いので、一人親の家庭では子どもが一人で夜を過ごしているのです。
    「便利さがドラッグ」現代人はまさに中毒症状ですよ。

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  2. 便利さの裏にはそれを支える社会的な構造があり、その弊害もある、ということをまず理解することではないでしょうか。それを分かった上で、どちらに行きたいのか、というのを社会全体として考えていく必要があると思います。

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