2013/11/18

OECD訪問

先日パリに行って来ました。出張で。パリに行くのはこれで二度目ですが、前回は学会での発表が目的とはいえ、下の娘にまだ母乳をあげている頃だったので、下の娘と夫の母を連れて三人でパリに行き、私が学会に出席している間は夫の母に娘をみていてもらい、セッションの合間に授乳して、とかなりばたばたしていました。おかげで、パリ観光なんてほとんどできないままにノルウェーに戻ったものです。さて、今回はといいますと、主な目的は、パリのOECD本部でのミーティングです。OECDといえば、経済開発協力機構のことで、私も直接の関連はありませんでしたが、OECDからの統計などを引用させてもらうこともある国際機関です。

なぜOECDでミーティングなんていうことになったかといえば、大学院時代の同級生が最近OECDに移ったからです。フランス人の彼は大学院を卒業してからしばらくワシントンDCで働いていたのですが、最近一家で(同じくフランス人の奥さんと娘さんふたり)祖国に戻ってきたのです。そこに、同じく大学院時代の友人(世銀勤務)がミーティングをに来るというので、仕事の話をしつつ同窓会気分も味わえると、私も便乗することになったわけです。世銀の友人は仕事で実際重なる分野があるのでいいのですが、OECDの友人の方は、仕事では直接関連がないので、OECDの中で関連のある人とのミーティングをセットアップしてくれる、と言います。そして、私の「幸福度と労働市場に関する仕事をしている人と会いたい!」というリクエストに応えて、友人はいくつかミーティングをセットアップしてくれました。

OECDは、様々なレベルで様々な仕事をしていますが、私が特に興味があったのが「Better Life Initiative」という、よりよい暮らしを実現する上でのイニシアティブの展開です。その一部として、「よりよい暮らし指標(Better Life Index)」という、国内総生産や国民総生産のような経済成長の指標には必ずしも現れない、暮らしやすさのインデックスを作ったのです。(OECDのように何十カ国ものデータを処理して比較しなければならない場合、データが各国でばらばらに集められているような時には直接比較は難しいので、このよりよい暮らし指標はランキングにはなっていません。)その中にはワークライフバランスや男女格差など、私の興味のあるトピックも含まれているので、その仕事に関わっている人と会って話がきけるのは大変面白いと思ったのです。また、労働経済の分野でもこれらのトピックは扱われているので、そちらの分野の人にも是非話をききたいと思ったわけです。そして、前述の友人の紹介で、それらの方々とお会いできることとなりました。

さて、私の方でも、最近本格的にこの分野の研究を始めることにしました。分野としては専門外ですが、今まで消費者の心の中を探ってきた身ですし、一応、応用経済学者。応用する分野がちょっとくらい変わっても、経済学のプリンシプルは変わりません。念のため同僚の労働経済学者に共同研究をするということで了解も得て、準備万端。さっそく、ノルウェー人の幸福度について分析を始めた矢先だったので、このOECD訪問はまったくタイムリーでした。

さて、そういうわけで、パリでのミーティングに出向くことになったわけです。久しぶりに友人たちに会えるのと、OECDの訪問とで、この出張を大変楽しみにしていたのですが、その前に学会での発表が入っていたのと(幸いスタヴァンゲルでの学会だったので、少なくとも出張はしなくてすみましたが)二つ教えているクラスの期末試験がもうすぐであるのとで、もう目の回る忙しさの中、手ぶらでミーティングに行くのもはばかられるので、一応「私はこういう研究をしています」という話もできるように幸福度の研究をする時間もなんとかひねり出し、ばたばたとパリに旅立ったのでした。

そして、パリにのホテルにも無事到着し、翌朝スマートフォンのグーグルマップを頼りにOECDの本部に向かいました。近くのホテルを取ったので、徒歩15分ほどの距離でした。本部のビルにはでかでかとOECEと出ていたので、迷うこともなく一安心。しかし、さすがに警備は厳重で、入り口で荷物のチェックと金属探知機を通り、ビジターのバッジを貰い、友人を待ちます。そして現れたのは、ちゃんとスーツを着たまともな社会人。学生時代のカジュアルな格好しか覚えがないのと、自分の職場でスーツを着た人を見慣れていないので、ちょっと新鮮です。二重の自動扉を抜けて内部に入ると、なんだかオフィスというより、コンベンションセンターみたいです。実際、毎日のように様々な会議やらワークショップやらが催されているのだそう。そして、新しめなビルは、環境にやさしい様々なテクノロジーを駆使して10年だかかけて建てられたそうです。そして、地下通路を通って(多分)隣の建物に移って彼のオフィスへ。オフィスは普通でしたが、驚いたのはみんな留守でもオフィスのドアが開けっぱなしだったことでしょうか。それだけ安全だということなのか、そういうポリシーなのか。

ミーティングの合間に少し時間があったので、友人について会議のひとつに顔を出して来ました。その会議は、オランダの水の政策に関わる会議で、OECD各国の代表をはじめ、色々な機関やNGOの代表が、オランダの水政策に関しての意見を交換しています。日本からの代表の方も座っていました。このような会議が毎日いくつも行われているらしいOECD。国際機関って、こういうものなのでしょうか。

勝手にお邪魔した会議の様子。公用語は英語とフランス語。