2012/02/24

ノルウェーバレエと日本人のアイデンティティー

上の娘(6歳)がバレエを習っているのもあって、きのう二人でバレエを見に行ってきました。見たのは、ノルウェーのナショナルバレエの公演で「ジゼル」。チケットを買った後であまり子供向けの内容でもないな、と気付きましたが(ごく簡単に説明しますと、村娘のジゼルがお忍びで村人のフリをしていた伯爵と恋に落ちるも、彼のウソがばれて、しかも婚約者までいることを知ったジゼルは心の痛手のあまり死んでしまいます。その後、後半では精霊となったジゼルが、精霊の女王が伯爵を踊り殺そうとするのを阻止する、というような内容です)事前に内容を説明しておけばいいだろう、ということにしました。

始めはけっこう熱心に見ていた娘ですが、さすがに後半は疲れてきて、最後の方はかなり眠そうでしたが、2時間の公演を全部見ました。感想としては、ダンサーは皆さん素晴らしく、その美しさにうっとりでした。音楽もよく、バレエに全然なじみの無い私も十分に楽しめました。ただ、私は主役のジゼルを西野麻衣子さんという日本人のダンサーが踊ってくださるものと期待していたのですが、当日の主役は別のダンサーだったので、少しがっかりでした。

実は去年のクリスマスのころ、「くるみ割り人形」を家族で見に行ったときに、彼女が金平糖の精を踊っていて、それがものすごく美しかったのも印象的でしたが、娘が「Hun er janansk (彼女は日本人よ)」と得意げに一緒に観にいっていたイトコやおばあちゃんに話していたのを見て、そういえばノルウェーで日本人がスポットライトを浴びる、という光景はあまり見たことがないと気付きました。


私はもちろん日本で生まれ育った生粋の日本人であり、周りも日本人ばかりの環境で育ったので、娘達が経験する多国籍性というものを本当の意味では理解できないと思います。ノルウェーに住みながら、半分日本人であり、そしてまた、日本にいるときにも半分ノルウェー人である、という感覚は一体どういうものなのでしょう。

日本人の親としては、やはり娘達に日本人としてのアイデンティティーも持って欲しい、と思っています。そして、ノルウェーで観客の拍手喝采を浴びる美しい日本人のダンサーを間近で見る、というのはそういう意味で良い経験なのではないかと思うのです。「その集団の一員であることを誇りに思う」ことは、アイデンティティーの形成に必要な条件なのではないでしょうか。もちろんこの場合、西野さんが素晴らしいのであって、べつに日本人だから素晴らしいわけではないのですが、それでもやはり、同じ日本人としてちょっと誇らしく思うのは人情というものです。

「ジゼル」では、西野さんは出演しておられませんでしたが、他に数名日本人のダンサーもおられたので、私のアイデンティティー形成の目論見は少しは効果があったかと思います。娘が家に着いて最初にしたことは、夫にプログラムを見せて、どのダンサーが日本人だったかを説明することでした。

6 件のコメント:

  1. 連投で申し訳ありません。11月にオスロで「スワン・レイク」を観た時、西野さんを含めて4人の日本人ダンサー(男性1人)が出演していました。皆さん、優雅で美しく(こっそり)鼻高々でプログラムを見ていました! 数日前に観た、ヘルシンキの国立バレエのプリマも日本人女性で、とても感動しました。なぜか私も自分の事のように誇らしかったのです。お嬢様も同じ気持ちだったのでしょうか?

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  2. 先日ローザンヌでも日本人が優勝したというニュースを見ました。バレエの世界では日本人大活躍ですね!嬉しいことです。

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  3. 今晩は~☆

    うちの娘達はもう成人して独立してますが
    小さい頃は 日本語の勉強にそれこそ鬼母になって
    教え込みました。
    言葉が一番のアイデンティティと思ったからです。
    お陰で2人とも今でも私との会話は日本語で
    有難いと思っております。

    ローザンヌのコンクール、TVで見ました。
    嬉しかったですね^^

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  4. やはりそれくらい気合を入れて日本語教えないとなんですね・・・。私も日本語で話してはいるのですが、子供達はノルウェー語と英語とごっちゃになっていて、日本語だけでしっかり会話ができません。日本語でうまく伝えられないと英語に変えてしまいます。「日本語でね」とお願いしても「NO!」なかなか上達しません・・・。

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  5. 橋本幸代ballet 橋本幸代2014/09/27 16:00

    西野麻衣子を応援下さり、ありがとうございます。私は麻衣子を日本で教えた橋本balletの橋本幸代と申します。
    海外で活躍するダンサーは並大抵でない努力を越えて舞台に立っていますので、麻衣子意外の人でも活躍する姿を見ると…嬉しく、(涙)になります。海外でお暮らしの方々は、日本に居る私達よりアイデンティティーを感じられ、求められるのでしょうね…。
    麻衣子も来月一歳になる男の子をもうけ、日本名とノルウェーの名前をつけています。言葉も両国と英語を教えると言っています。
    出産後の復帰舞台は白鳥の湖、9月にはジリキリアンの創作を主役で踊りました。また機会がございましたら、是非舞台をご覧くださり応援下さいませ��

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    1. コメントありがとうございました!返信が遅くなり、申し訳ありません。西野さんは、直接には存じ上げませんが、ノルウェー人のあいだでも「ちょっと、ウチのプリマ素敵でしょ!」みたいに自慢してしまう存在のようです。雑誌やテレビでも取り上げられ、日本人としては勝手に鼻が高いです。今後益々のご活躍楽しみにしております。橋本先生も、引き続き世界で活躍するダンサーの育成、がんばってください!

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