2012/03/08

子供の生命

ちょっと(かなり?)暗い話題かもしれませんので、朝読んでる方は夜まで待った方がいいかもしれません。


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先日、お葬式に行ってきました。亡くなったのは、夫のいとこ夫婦の赤ちゃん。

妊娠初期の時点で、赤ちゃんの心臓にかなり深刻な問題があることが分かっていました。それでも彼らはその赤ちゃんを産むことに決めたのです。赤ちゃんが生まれたら、すぐに集中治療室に入れられるように、いとこ夫婦はオスロの病院に入っていましたが、予定日より一ヶ月以上早く生まれて来てしまい、もともと心臓に欠陥があるのに加えて未熟児。生まれて間もないのに、何度も大きな手術を受けていました。体にたくさんのチューブを着けられてガラスの箱のなかに横たわる赤ちゃんの姿は写真で見るのも痛ましいものでした。この、直接会ったことのない赤ちゃんは、しかし、一ヶ月ほどで、その短い生涯を終えたのでした。

平日のお昼から行われたお葬式に50人ほどの人が集まり、その赤ちゃんにお別れを言ったわけですが、皆さすがに暗い表情です。目頭にハンカチを当てる人もたくさんいます。赤ちゃんの両親とおばあさん(夫のおばさん)も、泣き叫んだりしないでじっと悲しみに耐えている感じが痛々しいです。子供の死というのは、こんなにも人々を暗い、いたたまれない気持ちにさせるのだと実感します。

お葬式に出る前、職場で「今日これからお葬式に行くの。」と同僚に言うと、もちろん「誰の?」とききます。私は正直に「ゴーム(夫)のいとこの赤ちゃんが亡くなったの」と伝えると、それが知らない子でも、みんな、かなりいたたまれない気持ちになるようです。子供のいる人はなおさらです。

赤ちゃんはオスロで生まれてオスロで亡くなったので、お葬式に集まった人たちも、ほとんどがその赤ちゃんに会ったこともないはずです。それでも、小さい棺おけや、その中に横たわる赤ちゃんのことを思うと、とても悲しい気持ちになります。



夫は、お葬式には出席しませんでした。その時間ちょうど授業があった、というのもありますが、自分のいとこ夫婦の、かなり深刻な欠陥があると分かっていながらその赤ちゃんを産む、という選択に納得がいかなかった、というのもあります。いとこ夫婦は、その選択によって、自分たちのみならず、彼らの周りの人々みんなにこのような辛い思いをさせているわけです。それは、お葬式に出るとよくわかります。子供を産む、産まない、というのは超個人的な選択であるわけですが、その選択がまわりに与える影響はとても大きい、ということをひしひしと感じます。

けれど、もしその赤ちゃんが生きていたら、その子はこれだけの人に喜びをもたらしたはずである、と私は考えずにいられませんでした。失ってしまった悲しみの大きさに比例して、もし結果がちがうものであったら、もしその赤ちゃんが無事に成長していったなら、その喜びも大きかったはずです。例え直接の関わりが薄くても、年に一度でも「元気に育っています」なんていう知らせを受け取るだけで、少し温かい気持ちになります。子供たちはその周りに光の輪のようなものを持っていて、まわりを明るく照らしてくれるように思います。その輪が増えていったら、社会はもっと明るいものになるように思いませんか?

社会という共同体の最も重要な機能のひとつは、次世代を産み育てることであるはずです。ほとんどの先進国で少子化が進んでいるようですし、日本においては出生率が1.39。少し上昇傾向にあるとはいえ、まだ随分低いです。もちろん、子供を増やせば社会が明るくなる、というほど事は単純ではないことは分かります。実際人口が増えている途上国などでは、それによって社会が明るくなっている、とはいえないかもしれません。けれど、子供が減っている国で子供を産み育てたい、と思う人たちがいたら、国や社会としてできるだけの手助けをするべきではないでしょうか。

このいとこ夫婦の場合、少なくとも金銭面では心配しなくてよかったはずです。妊娠・出産と子供に関する個人の医療費の出費は基本的にタダだからです。また、だんなさんの方は一ヶ月以上仕事を休んでいたわけですが、そのせいで解雇されるかもしれない、などどいう心配も、もちろんしなくていいはずです。また、病院のスタッフの対応にもとても満足・感謝しているとききました。辛い経験であったことには変わりありませんが、それでも、いとこ夫婦は社会から充分サポートを受けたのではないでしょうか。

とはいえ、彼らは例えこの先また赤ちゃんを授かったとしても、今失ってしまった命はずっと心の中で埋められない穴として存在することでしょう。それを思うと私も本当にいたたまれない気持ちになりますが、今生きている命やこれから生まれてくる命が大切に守られうように力を尽くすことしか私たちにはできません。

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