2012/04/10

ノルウェーVSイギリス

先日訪れたロンドンでお世話になった知り合い一家は、お父さんもお母さんも石油関連の会社で働いています。スタヴァンゲルはノルウェーの石油基地なので、石油関連の会社で働く人はたくさんいます。石油関連と一口に言っても、エンジニアからファイナンス、HR(ヒューマンリソース)とたくさんの仕事があるわけですが、専門職の人たちの中には転勤族もいます。この人たちは、2、3年毎などに一度転勤があり、いろいろな国を渡り歩きます。娘の学校にもそういう親御さんの子供たちがたくさんきているので、やけに出入りが激しいです。転勤は、会社から出向を命じられて行く場合と、本人が希望する場合とあるようです。

知人一家の場合は、会社からそういう話がきて、そのときちょうど第二子を妊娠中だった奥さんは、ロンドン赴任と産休を合わせることにして、娘さんもまだ学校に上がる前、ということで、ちょうどいいタイミングであると判断してロンドン赴任を決めたようです。

そして、1年半。このままロンドンに滞在することも、仕事上は可能であるけれど、この一家はノルウェーに戻ってくることにしました。なぜ素敵なロンドン生活を捨ててスタヴァンゲルに戻ってくることにしたのか、もちろん突っ込んで質問させてもらいました。

ひとつは、労働のスタイルの違いです。イギリスはどうやら、ノルウェーよりもかなり労働時間が長いようです。朝7時に出勤して夕方5時、6時まで仕事。通勤に小一時間かかるので、朝はやくに家を出て、夜帰宅。これは、日本人にしたら普通、もしくはいい方かもしれませんが、ノルウェーの労働スタイルに慣れた人にとってはツライことでしょう。なにしろ、ノルウェーは朝8時から夕方4時ごろまでが普通の労働時間。スタヴァンゲルなら、通勤も長くて20~30分くらいなのではないでしょうか(しかも自家用車で通勤が普通)。イギリススタイルだと、子供と過ごす時間もほどんどありませんが、ノルウェーだと家族揃って夕食を食べ、宿題を見てあげたりする時間も十分あります。

そして、物価高。ノルウェーはかなり物価が高いですし、家も小さな街のわりに割高ですが、やはり世界有数の都市ロンドンの住居費はかなり高いようです。彼らは南西地区にある住宅に住んでいましたが、やたらに縦に伸びた住宅で、全部で7層!地下、キッチン(1階)、リビング(2階)、ベッドルーム1とバスルーム(3階)、ベッドルーム2と3(4階)、バスルームとベッドルーム4(5階)、そしてロフト(6階)、という造りです。なので、面積的にはけっこう広いですが、それが横でなく縦に伸びているわけです。ロンドンでは典型的な住宅であると言っていました。この住宅は会社の斡旋で住んでいるのですが、このままロンドンに滞在するとなると、自分で住宅を購入しないといけなくなります。そして、現在と同じような条件の住宅となると、1.5億円(!)くらいするんだとか。それでも、彼らによると、そこはミドルからアッパーミドルクラスの人の住む住宅だそうで、決してお金持ちの住む地域ではないということです。



では、アッパーミドルクラスの人が一体どうやって1.5億円の住居を買うのかときくと、基本的に夫婦共働き、そして二人とも鬼のように働くのだそうです。子供の面倒はナニーにみてもらい、とにかく働き、生活を維持するのだとか。本当ですか!?統計を取ったわけではないのでどこまで本当なのかはわかりませんが、少なくともこれが彼らの見る一般的なロンドンのプロフェッショナルカップルの生活のようです。

そして、娘さんの教育の問題。娘さんは由緒正しい私立の学校に入っているのですが、かなり競争が激しいそうです。それまでわりとおっとりしていた娘さんが、まだ小学校一年生ですが、この学校に入ってから、何かというと、「xxちゃんより私のほうが上よ」と、優劣をつけたがり、遊びでも勉強でも、とにかく何でも競争になってしまうのだとか。適当な競争はいい刺激になるとはいえ、これではあまりにも行き過ぎなのではないか、と心配になったようです。また、宿題もすでに山のようにだされ、それに加えて様々なレッスン。娘さんはそれなりに順応してやっているようですが、これでは子供がかわいそうだと思ったようです。

加えて、その学校は中学校までしかありません。なぜかというと、高校は全寮制の学校に入るのが普通だからのようです。ハリーポッターの学校のようなものを想像していだたければよろしいかと思います(彼らはもっと小さいときから全寮制の学校に送られていましたが)。自分の子供たちを高校生の時点で全寮制の学校に送る、というのも、かなり抵抗を感じたようです。また、現在は子供の学費は会社が払ってくれていますが、このままロンドンに残った場合は自費になります。授業料はスタヴァンゲルの英国学校の3倍。子供二人を送るのは経済的にも大変です。公立の学校に入れるという選択肢ももちろんありますが、それだったらスタヴァンゲルの英国学校に、と思ったようです。

というわけで、以上のことを考慮し、家族全体のことを考えた場合、ノルウェーに戻ったほうが幸せな暮らしが送れる、とこの一家は結論したようです。私たちがアメリカからノルウェーに移ってきたのと似ています。私たちもまた、家族としてはノルウェーで暮らした方が幸せなのではないか、と思って移ってきたわけですから。いろいろ愚痴はでますが、やはりノルウェーは家族に優しい社会です。

また、先ほども述べたように、娘の学校は親御さんの仕事の都合で転校していく子供たちがたくさんいます。何年という単位で見たら、そのまま残っている子供の方が少ないくらいです。私たちは娘の学校に満足していますが、その出入りの激しさは、娘にとってはあまりよくないのではないかとは少し心配しています。娘はすでに2,3人の親友を転校で失ってしまった経験があります。なので、私たちにとっては永住組が増えるのは大変嬉しいことです。このまま、うちの娘と知人の娘さんがずっとよい友達でいてくれたらいいな、と思っています。

2 件のコメント:

  1. はじめまして。 Ayaと申します。長く付き合っている人がベルゲン出身なので、色々とノルウェーについて知りたいなと思い、毎日、Yukoさんのブログを読ませてもらっています。  現在、私は香港に住んでおり、ベルゲンとの遠距離恋愛ですが、Yukoさんのブログで色々と勉強しながら、この恋愛が成就するといいなと思っています。 これからも、ブログ楽しみにしています。

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    1. ありがとうございます!
      香港とベルゲンとは、本当に遠距離ですね。
      ノルウェーの社会やノルウェー人を知る上での、そしてこの先ノルウェーに移住する、しない、という選択をする上での参考にしていただければ大変嬉しいです。
      Ayaさんの恋愛成就を応援してます!

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