2012/04/16

共働きプロフェッショナル夫婦の悩み

大学院のクラスメートで、アメリカの大学で准教授をしているアメリカ人の友人夫婦がいます。普段そんなに緊密に連絡を取っているわけでもないですが、フェイスブック経由で、奥さんがワシントンDCの政府系の研究機関で働くことにした、というのを知りました。去年スタヴァンゲルに家族で訪ねてきてくれたときに職探しをしている旨をきいていたので、とうとうか、と思ったわけですが、旦那さんの方は今DC近辺で職探しをしている、ときいて、少し意外に思いました。

この夫婦は二人ともテニュアトラックの准教授のポジションについていたのですが、旦那さんの方が最近テニュアを取った、つまりその職場で永久就職の地位を獲得してアシスタントからアソシエートプロフェッサーに昇進したばかりでした(アメリカのテニュアシステムについては、「なぜノルウェーに住んでいるんですか?」参照)。なので、その永久就職の口を蹴ってDCに行くとは、ずいぶん思い切った決断をしたものだ、と思ったのです。

でも、今の職場で、奥さんはけっこう大変な苦労をしていました。それほど詳しくは知らないのですが、教えている学生との関係がうまくいないことが何度か続いて、ティーチングの評価があまりよくなかったようです。さらに、それを改善しようにも、学部内の他の教授たちが全く助ける気がなかったようで、こんなに私のことを評価してくれない所で働くのはまっぴらごめん、もう限界、というところまできていたところに、そのDCの機関から「お願い、是非ウチに来て!」と彼女にラブコールが送られてきたようです。待遇も現在に比べて格段にアップ。彼女がそっちに移りたい気持ちもとてもよくわかります。

しかし、彼女の場合、自分一人のことを考えていればいいわけではありません。旦那さんと子供二人。そして、旦那さんの方は永久就職が決まったばかり。さらに、旦那さんには子供たちに、自然の中でのびのび育って欲しい、という願いがあるようですが、DCに越したら自然のなかでのびのび、という具合にはいなかいでしょう。うーん、難しい!


日本だったら、こんな場合どうなるのでしょうか。旦那さんの仕事が優先になるのでしょうか。私は日本人で共働きプロフェッショナルの夫婦という友達があまりいません。結婚している友人は、少なくとも子供ができた時点で仕事をやめてしまっているからです。それは、その時点で旦那さんの仕事が優先された、ということなのでしょうか。では、子供ができても仕事を続けている女性が、私の友人夫婦のようなジレンマに会った場合、どうなるのでしょうか。

この友人夫婦の場合は、旦那さんが現在職を探し中(といっても今の職を辞めたわけではなく、今の仕事をしつつ他の職を探している最中)、ということで、もしいい職がみつかれば、今の仕事をやめて引越ししてもよい、という結論に達したわけです。その旦那さんのほうが、今ちょうどスタヴァンゲルに来ているので、事情をきいてみたところ、彼自身はテニュアを取って昇進した時点で、ある程度やりたいことを達成した、という満足感を覚えているようです。そして、その過程で奥さんがある意味犠牲になってきたという認識があり、自分は今までやりたいようにやってきたのだから、次は奥さんに満足のいくよう仕事をしてほしい、という思いがあるようです。もちろん、それは旦那さんもそれなりに納得のゆく仕事の口があったら、という条件付きですが。

私たち夫婦も含めて、似たような話はよくききます。同じような境遇で、旦那さんのキャリアを優先させて奥さんは非常勤、というカップルも知っています。また、娘の通う英国インターナショナルスクールは、ノルウェーには珍しく専業主婦の人がたくさんいるのですが、それは、沢山の親が石油関連の会社で働いていて、転勤が多いため、奥さんのキャリアを構築するのが難しく、結局専業主婦になるしかない、というのも大きいと思います。前にも書いた、アメリカから来ていた娘の友達のママは歯科医、また、ナイジェリアから来ている娘の友達のママは弁護士、とプロフェッショナルなワーキングマザーだけれど、夫の仕事の関係で、短期間とはいえ、自分のキャリアを一休みする、という人も少なくありません。

どのような形でカップルの、そして子供たちも含めた家族全体にとっての最善の道を選ぶのか、難しい選択です。似たような内容の記事がアメリカン・サイエンティストという一般向けのサイエンスジャーナルに載っていたのも読んだばかりです。その記事は、数学的な分野(数学、物理学など)で女性のテニュアの大学教授が少ないのはなぜか、という内容でしたが (興味のある方、リンクはこちら(英語))、子供の数が増えるにつれ、男性の仕事時間は増えていくのに対して、女性の仕事時間は減少していく、という面白い統計もでていました。

家庭とキャリアのバランス。これは、プロフェッショナル共働き夫婦の永遠の課題なのでしょうか。

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