2012/09/22

食器洗浄機 対 メイド

先日プラハの学会で、久しぶりに元同僚のノルウェー人男性に会いました。彼は私たちがスタヴァンゲルに引っ越した時はまだ同じ大学で働いていたのですが、3年ほど前に南米、ペルーの大学に移ったのです。彼の奥さんはペルー人で、彼らは当時2歳の息子さんともどもスタヴァンゲルで暮らしていたのですが、どうやら奥さんがノルウェーでの生活に耐えられなくなったようです。それで、奥さんの実家の近くの大学に職を見つけてそちらに移ったのです。

私は奥さんに直接会ったことがないので、詳しい事情はよくわからないのですが、その同僚はスタヴァンゲル出身。地元嗜好が強いスタヴァンゲル人の彼が遠い南米に移るほどとは、それなりに切迫した状態であったのではないかと想像します。周りの人から色々事情をきくと、奥さんがスタヴァンゲル、ひいてはノルウェーに馴染めなかった理由のひとつは、メイドやナニーが雇えなかったことにもあったようです。どうやら南米ではメイドやナニーを雇うのはわりと一般的であるようで、専業主婦であっても外で働いていても、家庭における女性の役割のひとつは、それらの使用人のマネージメントであるようです。そのような環境で育った彼女は、掃除も洗濯も食事の支度も子供の世話も自分ひとりでしなければならない生活(旦那さんはフルタイムで働いているので、それらは一応は専業主婦であった奥さんの担当であったようです)に馴染めなかったようです。

そういえば、私のママ友でメキシコ人の女性は両親ともにお医者さんだったそうですが、家には何人も使用人がたそうです。彼女は娘さんがふたりいるのですが、ふたりともメキシコで生みました。私は勝手な想像でノルウェーの方が病院などの環境がいいのではないかと想像していたので、彼女がメキシコに戻って出産するときいてびっくりしたのですが、理由のひとつには、メキシコに戻ればお母様がいるのに加えて、当然ナニーも雇うわけで、そうした全面的なバックアップがあることもあって、少なくともはじめの数ヶ月はメキシコに滞在していたようです。彼女はメキシコに戻って暮らすことは考えていないようですが、家事はノルウェー人の旦那さんのほうがメインな感じです。


さて、その元同僚とプラハで話をしたのですが、彼らはもしかしたらノルウェーに戻ってくるかもしれないとのこと。私が「メイドやナニーのいる生活に慣れてしまった今、本当にノルウェーの生活に戻れるの思うの?」とからかうと、「まあ、まだ引っ越すことになるかどうか分からないけれど、もしノルウェーに戻ることになったら、難しいとは思うけど、なんとかやってみる」そうです。人件費の高いノルウェーではメイドを雇うなど、よほど高所得の人でもないと無理です。ペルーからメイドを連れて来れば?ときくと、やはりビザなどの問題があるので難しいそうです。じゃあ、自分たちで家事をするしかないね、と言うと、彼曰く、ノルウェーはそれでも食器洗い機などの家事を軽減するインフラが揃っているけれど、ペルーのキッチンにはそのような設備がないそうです。例えば食器洗い機を例にとれば、ただ食器洗い機を買えばいいわけではなく、その近くに電気のコンセントが必要であり、また、食洗機に水にを引く水道の設備やパイプも必要です。ペルーのキッチンにはそういった設備がないので、結局食器洗い機を取り付けるよりもメイドを雇ったほうが安く付くのだそう。そして、食器洗い機はもちろん食器しか洗いませんが、メイドは掃除も洗濯もしてくれます。それでは、どう考えてもメイドを雇ったほうがトクです。

もちろんこのような状況が生まれるのは、ペルーに激しい貧富の差があるからです。農村から都市に出てくる若い娘たちにとっては、裕福な家庭でメイドの口があれば、それはいい働き口であることでしょう。反対にノルウェーのように格差の少なく、労働者の権利が保障されている国では、違法でもない限り、そんな簡単にフルタイムのメイドなど雇えるものではありません。

私も忙しいと、「あ~あ、メイドが欲しいなあ。」などど考えることもありますが、金銭的に無理なのに加えて、使用人など使ったことがない私は、メイドに対してどう接したらよいのか戸惑ってしまう気もします。メイドに下着など洗ってもらったりするのは、かえって居心地悪いのでは?その元同僚の話では、奥さんはメイドと世間話などもせず、雇い主と使用人の境界線はわりとはっきりしているようです。しかし、平等教育が行き届いているノルウェーで生まれ育った彼にはそういった環境に対して抵抗があるのでははないか、と尋ねると、「いや、はじめは少し抵抗あったけど、やっぱり便利なんで、すぐ慣れた」そうですが、彼はメイドとも世間話をしたり、一緒にお茶を飲んだりするそうです。

2 件のコメント:

  1. はじめまして こんにちは♪
    ノルウェー人妻で、一歳の子とメキシコに暮らしてます。たまたまブログ通りかかりました。
    うちも、今、週2回、掃除、子守りにメイドを雇っています。朝から夕方までで1500円位一回につき払っています。
    しかし超格差社会のゆえ、実現できることですよね。
    メキシコは、低賃金長時間労働が多いですもん。
    ノルウェーは確かになんでも高いですが、逆にいえばレストランの調理人だって、掃除婦だって、屋根の修理人だって、申し分ない給料をもらっている結果なんですもんね。
    国民の幸せ度が高いのも圧倒的にノルウェーですね。
    主人の出身のオスロに、しばらくしたら引っ越す予定です。また遊びにきます(*^^*)

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    1. 一日1500円・・・ノルウェーだったらお昼ご飯も買えないような値段ですね。ノルウェーに引っ越した際には、物価高メイドなしのノルウェー生活の感想をぜひきいてみたいものです。

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