2012/09/10

論文発表は年の功

先日ベルゲンでの出張から帰ってきて、私の忙しかった夏もようやく終わった感じです。この夏は本当に出かけてばかりでした。日本に帰ったのももちろんですが、そこからノルウェーに戻ってきてすぐにバルセロナに出張、そのあとまた数日あけてトルコにバケーション、そしてその後すぐまたシアトルに出張、そして先日のプラハとベルゲン。いくら旅行好きの私とはいえ、さすがに疲れました。

出張は、おもに論文や研究結果を学会や会議で発表するのですが、もちろんそこで発表する分析をして、発表用のプレゼンテーションを準備しなければいけません。また、分析や発表は誰を相手に喋るかによってももちろん違います。学者が相手の発表とビジネス人向けの発表では、やはり内容がまったく違います。学者向けは、論理や分析の手法、結果の統計的有意性などが中心になりますが、ビジネス向けだと、より現実問題に即した結果を、できるだけわかりやすく説明することになります。もちろん、発表するとなれば、できる限りクオリティーの高いものにしたいと思うのは当然で、そうすると、ひとつの発表を用意するのに、やはりそれなりの労力が必要となります。

そうやって忙しく発表の準備に追われているとき、ふと「思えば遠くに来たものだ」と思ったのは、まだ大学院生の頃に学会で発表したときと今を比ると、ものすごい差があると思ったからです。あえて、成長といえるかもしれません。昔に比べて、私のプレゼン能力は格段に上達したと思います。単に学生時代がひどかったため、比較すれば今が上、ともいえるかもしれませんが。とにかく、プレゼンの「プ」の字もよく分かっていなかったと思います。


私も含めて初心者が(時にはプレゼンに慣れてるはずの人も)陥りやすい間違いは、言いたいこと全てをスライドに書き込んでしまうことです。慣れていないと、そうすることで言い残しがなくて安心するわけですが、それではプレゼンを見ている人はスライドの字が小さくて見えないか、全部見終わる前に次のスライドに移ってしまって読み終えることができません。そして、何より、そうやって一字一句読み上げるようなプレゼンは救いようもなくつまらないのです。例えスライドに書いてなくとも、原稿を読み上げている場合も一緒です。これは、今でも、初めて発表するような大学院生によくみられるパターンなので、初々しくもありますが、発表としてはダメでしょう。

また、よくありがちなのは、なんでもかんでも入れてしまって、発表が長くなってしまうことです。これも、気持ちは分かります。せっかく集めた資料や夜遅くまでがんばって走らせた分析結果など、やはり全部発表に使いたいものです。しかし、15分の発表に40枚もスライドがあったらどう考えても発表しきれません。そうすると、結局駆け足で発表することになり、肝心の内容がうまく伝わりません。

学生時代は何日もかけて発表を用意し、それでも上に上げたような失敗に陥り、あまり上手でない発表をしていたわけですが、さすがに、やってるうちに段々と慣れてきます。また、クラスを教えることで、人前で喋るのにも慣れ、神経も図太くなっていきます。そうして今では、分析はもちろん時間をかけますが、それもギリギリで行われるため、発表用のスライドの準備は移動中の飛行機の中やホテルの部屋、下手したら他の人が発表している会場でノートパソコンに向かって、なんてことになってしまいました。そして、周りを見渡せば、同じようにノートパソコンに向かっている同業者がいっぱい。これでは学生に示しがつきませんが、そうやって短時間に仕上げたプレゼンの方が、学生が何日もかけて作ったプレゼンより出来がいいのは、やはり年の功というものでしょうか。

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