2012/09/11

出張と罪悪感

出張が重なった話は前回しましたが、出張は行ってる時も大変ですが、行く前と帰ってきてからもけっこう大変です。なぜかといえば、私が出張中はもちろん夫が子供の面倒をみるわけで、朝ごはんとお弁当はもともと夫の担当とはいえ、そこに加えて上の娘の宿題をみてあげたり、体操着や図書館の本など、娘の学校にその日に持って行くものを揃えたり、バレエのクラスの送り迎えをしたりと、やることはたくさんあります。そして、それを一人で全部カバーするのはやはり大変です。なので、私がいない間の夫の負担が軽くなるように、私もできるたけの支度をしていきます。娘が学校に持っていくものを揃えておいたり、お弁当やスナックに持っていく食べ物を買い置きしておいたり、子供のスケジュールを書いたメモを置いておいたり、掃除や洗濯もできる限り終わらせておきます。ただでさえ、発表の準備やその他の締め切りに追われているところに、さらにそれらの家事・子供関連のことを一通り終わらせなければならないので、出張前は本当に目の回る忙しさです。

プラハでの学会は同じ大学の同僚や、他の大学から知っている研究者も参加していました。私は全ての準備を終えて夕方の飛行機でプラハに向かったので、ホテルに着いたのはもう真夜中過ぎでしたが、そこで夜遅くまで飲んでいた彼らに遭遇したのです。わたしもお酒など飲みながら、「出張に来ると、やはり夫に対して罪悪感を感じてしまうので、彼の負担が軽くなるようにできるだけの支度をしてから来たために到着するのがこんな時間になってしまった」という旨を伝えると、ノルウェー人やデンマーク人の彼らに「そこで罪悪感を感じるあたりが、君はまだ日本人だね」などど言われてしまいました。そうなの!?あなたたち罪悪感ないの!?その場にいたのはほとんどが男性だったのですが、そこにいた女性同僚(博士課程の学生ですが、私より年上で、子供もふたりいます)は、「え、別に洗濯とかなんて、してこなかったけど。」とのこと。罪悪感を感じるとしたら、それは家を空けて寂しい思いをさせてしまっている、ということに対してであって、家事や子供の面倒をかぶってもらうことに対してではないようです。


そういえば、ある同僚は、なにかの会議に出席していたときに、女性の閣僚と一緒だったそうですが、エレベーターでその女性閣僚の旦那さんがベビーカーを押しているのを見たと言っていました。彼女も出張していて、旦那さんごと赤ちゃんも連れてきたのでしょうか。そして、奥さんが仕事をしている間、旦那さんが赤ちゃんの世話をしていたのでしょう。旦那さんが育児休暇中だったのかもしれません。奥さんが政治家や企業のCEOだったりすると、出張も多くて、その分旦那さんのサポートも必要になります。それが可能なのがノルウェーという国のすごいところかもしれません。(ただ、これがノルウェー人全般にあてはまるとは限りません。彼らはノルウェーでも学歴の高い人たちなわけで、低学歴層はよりコンサバであるという話もききます。)

最近見たデンマークの「Borgen (英語ではGovernment)」というドラマは、女性の首相の話ですが、このドラマの中でも、主人公の女性首相(40代と思われます)が家庭と仕事を切り盛りしながら政治の世界で生きていく様子を描いています。彼女の旦那さんは、大学教授という設定で、奥さんが国会に出席したり、いろいろなスキャンダルをさばいている間、家や子供の世話をしています。ただ、このドラマでは、結局夫婦仲がうまくいかなくなってしまうのですが。第二シーズンをまだ見ていないので、この後どうなるのか楽しみです。日本では、40代の女性首相など不可能な感じですが(男性でも無理でしょうか)、デンマークでは今実際に若い女性の首相なので、そういう意味ではありえない設定ではありません。また、共働きが当たり前の北欧諸国では、家庭とキャリアというのは共感しやすいトピックなのでしょう。もちろん、これは北欧女性に限りません。やはり最近、飛行機の中で見た映画はSATCのサラ・ジェシカ・パーカー主演で、「I don't know how she does it?」というタイトルで(邦題は分かりません)、やはり40代キャリアママの奮闘記でした。

こうして見ていると、やはり、キャリアと家庭の両立というのは難しいのだ、というのが伝わってきます。しかし、不可能ではない。そして、協力的で理解のある夫、というもの成功には欠かせない要素です。そして、協力的で理解のある夫の供給は、ノルウェーではわりと豊富にあるようです。少なくとも、私の周りでは、男性も普通に家事・育児に参加していて、奥さんが忙しいときはサポートしています。また、旦那さんも時間・労力的にサポートする力がある、というのも大切です。日本のように男性が長時間労働で疲れ果てていたら、奥さんのサポートどころではないかもしれませんが、ノルウェー男性はそうした「余地」があるようです。

さて、うちの夫の「余地」は、子供の面倒をみることで使い果たされてしまうようで、私が出張から家に帰ると、散らかった部屋と、洗濯の山が私を待っていることになります。なので、私は戻ってくると掃除と洗濯に追われることになりますが、それでも、安心して家を4日も5日もあけていられるのは有難いことです。この調子で、今月末からの学部のイタリア旅行の間もよろしく!

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